解答と解説

                      滋賀医科大学 臨床検査医学講座教授  岡部英俊

● ベセスダ問題 1〜10 

1.背景はそれ程汚い所見無くN/C高く、Chromatin増加があり、核緊満したParabasal cellがあり、SCC in situ (CIN III) HSILと判断される。     Class IV  

2. かなり好中球が多いSmearで上皮にも変性が加わっている。核が大きくKoilocyte様に見えるものがある。Chromatinが全般的に濃く染まる核の大きい細胞もあるが、ASC-USと考えられるが、LSILとしても可と思われる            Class IIIa  

3中層型で核大きく若干表面の凹凸の有る核がみられる。好中球が多くみられるがChromatinの粒状性のパターンがあり、RepairPatternとは異なりCIN II

        中等度異型Class IIIa HSILと判断される。  

4.NILM Herpes感染  

5. ライトグリーン好性のN/C高い細胞があり、CINの一般的なものより長い核があり、核の不整がかなり強くまた、OG陽性のやや紡錘形細胞があり、SCCと判断される。

 

 

● 症例問題 1〜10

問題1: 上皮内腺癌

いずれも写真も背景に壊死無く、淡明な結合性の強い細胞集塊があり、細胞野集塊はかなり広いSheet状のものがよじれた形になっている。かなり大きい集塊であるが、細胞の重積は乏しい。下段の拡大で、柵状配列が明瞭で、核偏在し、細胞質の色調とあいまって、頚部腺由来である事が明瞭である。細胞のサイズは、周囲の表層型の扁平上皮と比較すれば、通常の頚部腺のものよりはるかに大きくまた核も大きい事が容易にわかる。若い女性のSmearでかなり粘液が豊富に見えるが、分泌期の変化でないことは、周囲の扁平上皮細胞の核の所見から容易に判断でき、核のサイズを見れば、腺癌と診断できる。この所見のみで浸潤の有無は確実には同定できないが、背景の壊死の無いことと、選択肢からはAISと判断できる。  

問題2:扁平上皮癌

いずれの写真も余り壊死性背景はない。N/Cの高いライトグリーン好性の異型細胞があり、扁平上皮系の異型細胞と判断される。ある程度相互接着があり、右上写真では左上隅にはMoldingを示すものが数個あり、核形不整がありかなり、配列の乱れを伴う病変と判断される。若干好酸性あるものが下段にはみられる。これらの所見からは、背景の壊死はそれ程顕著ではないが、Invasive SCCと推定される。  

問題3:膣原発腺癌

ライトグリーン好性の異型細胞集塊があり、強い炎症を随伴している。細胞接着があるていど良い。核のサイズには相当のVariationがあり、Chromatinの荒いものも見られる。ただし角化を示唆する所見はない。左下段にはかなり大きい集塊があり、核の偏在傾向のあるものが認められる。他の写真でも同様の傾向がある。 細胞質の所見と核の位置、ならびに接着性という点から、核のVariationが強いものの、腺癌と推定される。 核所見と細胞質所見ならびに接着様式の評価のバランスを考慮することが大切である。  

問題4; 上皮内癌

非確定背景はきれいであるが、N/C4/5を超えるParabasal cellがあり、Chromatinの増加もありChromatin粒状性は余り派手ではないが、CIN IIICa In situ)の所見である。  

問題5; 頚部腺癌

左下の低拡大で、腔を作る接着性の良い腺系細胞の大きい集塊がみられる。その他の写真では、核類円形でサイズのVariationは無いが、周囲の炎症細胞と染色性とサイズを比較すると明瞭にChromatinの増量がある事が明瞭である。細胞質には小さくPaleな粘液を含むとおもわれるVacuoleがあり、核小体は浮き出るようなパターンではないが、Chromatinも繊細で線系統の異型細胞と判断される。核大きく、集塊様式胞質の染色性の均一性などを考慮すると頚部腺癌と判断される。  

問題6; 平滑筋肉腫

紡錘形の核異型のある細胞が平行に走行するのがみられこれは左上で最もわかりやすいが他の写真でも同様の配列がみられる。周囲に見られる小型のリンパ球核と比べればかなりHyperchromaticで有ることがわかる。多核細胞もあり核は全般的に長いが@両端は鈍で、Fibroblasticなものより鈍でA細胞質が淡く黄色で、Glycogenが存在することを示唆し平滑筋肉腫が考えられる。

右上で細胞質が大きく丸みのあるものがあるが、明瞭に腺への分化を示唆する所見無く、平滑筋肉腫と判断される。  

問題7;異型内膜増殖症

 左上下の写真ではかなり多数の腺がみられ、腔の拡張や分岐やBuddingがあるが、腺の辺縁のほつれはなく、間質との境界の乱れ、つまり浸潤を積極的に示唆する所見は無い。右側の上下では、間質の細胞に比べ手明らかに核が大きくChromatinの増加がある腺細胞がみられる。下段では、顕著な偽重層が見て取れる。複雑な分岐と核の異型があるが分裂の増加はそれほどめだたず、低拡大でCribriform patternを示唆する所見無く、また背景もそれ程炎症無く、G1の癌が除外できるわけではないが、所見からはComplex typeAtypical hyperplasiaと推定される。なおこの病変では卵管上皮のような繊毛は認めない。なお、G2とするには低拡大での構造、及び核異型からは無理がある。  

問題8:内膜腺癌(G1

年齢を考慮すると、採取された細胞量が多すぎる。右上段と、下段二枚では複雑な分岐を伴う腺構造が密にみられ、介在する間質は乏しい。核間距離の不同と、不規則重積があり、相当程度上皮のPolarityの乱れた病変と判断される。 腺の辺縁にはほつれが示唆されるところが有り内膜癌が考えられる。左上の写真では、核サイズにばらつきがあり、核間の不同があり、写真内の好中球と染色性及びサイズを比較すれば、かなり大きいが、大腸癌などの一般的なものほどのサイズではない。  

問題9; 内膜腺癌(G2)

出血性背景に核異型の強い腺系統の細胞がみられる。最も大きい集塊では、凹凸のあるSheetから腺の芽出が見られ上皮配列の乱れ顕著で、他の標本の所見をあわせ腺癌と判断されますが、かなり核異型が強いです。粘液は認めず大腸などの転移性癌をうかがわせる形態ではありません。内膜癌で良いと思います。Solidかどうかはこの標本では判断できませんが、核がかなり大きいので、取り扱い規約にしたがえばG2程度と推定されます。  

問題10EIC

背景はDirtyではありませんが、核小体の大きい細胞でN/C高いものがPapillary foldを作っています。Psammomaがあり、Serous typeの腫瘍が考えられる。子宮内膜で浸潤が余り無いと思われる背景所見につきEICと推定されます。