H19年度解答と解説 〔解説;滋賀医科大学検査医学講座教授 岡部英俊先生〕 |
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問題 1 細胞同定問題 |
傍基底細胞 炎症細胞が多数見られるスメアの中に比較的小型でライトグリーン好性の細胞が比較的表層の扁平上皮の中に一個見られる。 核は中心に位置し偏在傾向なく、細胞形態は類円形である。細胞質には貪食顆粒なく、核は類円形でゆがみなく、マクロファージ(組織球)などとは異なり、扁平上皮の深層型の細胞と判断できる。 N/Cの比率は高くなく、Chromatinは周囲の細胞の核の染色性やサイズと比較して、Hyperchromaticな所見なくChromatinの粒状性認めず、核の外形にも凹凸なく、深層系の扁平上皮(非腫瘍性)と判断できる。
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問題
2
細胞同定問題 |
頸管腺細胞 比較的炎症性の変化の強い標本で中央に核偏在傾向のある類円形の核を持つ細胞集塊がみられる。幾分細胞の重なりのある領域では核が若干濃くみえるが、仔細に見ると、周囲の細胞に比してそれほど核のサイズは大きくない。頚部の腺細胞と判断される。 核の異型が乏しい分化のよい腺癌(Adenoma malignum)との鑑別は、細胞質の色調を考慮すれば可能と思われる。 極めて分化の良い腺癌の場合には、本例の細胞のごとく、ライトグリーン性の細胞質を持つことはほとんどなくもっと淡い色調になる。また腺癌で細胞質がライトグリーン好性になるものもあるが、その場合はAdenoma Malignumより核異型が強くなるのが一般的であることを念頭におけば判断できると思われる。 修復細胞との鑑別もサイズと核所見からは容易であると思われる。
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問題
3
所見記載問題 |
炎症所見、化生細胞、Trichomonas.
炎症が強く、腫瘍性変化のないことが判断できれば必要最小限のレベルであるが、組写真の最後にみられるTrichomonasは、婦人科の細胞診では知っておくべき必要があり、この二つが把握できることが必要と思われる。このほか、やや核のサイズが大きいもののChromatinの増加なく細胞の外形から化生細胞と判定できるものがあり炎症の所産と考えられるが、この点に関する記述も記述してあることがReportとしては望ましい。
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問題
4
症例問題 |
頸部腺癌 (回 答:1
頸部腺癌、2 修復細胞、3
高度異形成、4 体内膜腺癌、5 頸部腺細胞) 細長い核が策状配列をとる集塊があります。 腺由来であることは明確です。 ポイントは正常の核に比べて長いことです。核の偽重層のあることが明瞭です。頚部腺上皮は非腫瘍でもReserve cell が表層の腺上皮の下で重層することがありますが、その場合の核や細胞質の形態は表層のものと異なっています。 この症例のような比較的単調に見える背の高い上皮の核偽重層は腫瘍由来であることを強く示唆します。また核のサイズとChromatinの染色性は、周囲の上皮や炎症細胞と比較して明らかに多く、核小体はかならずしもわかりやすいとはいえず、粘液もいわゆるゴールデンイエローではありませんが、腺癌と容易に診断できる所見です。
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問題
5
症例問題
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Herpes感染細胞 (回
答;1結核、2癌肉腫、3流産、4
Herpes感染細胞、5扁平上皮癌;大細胞非角化型) 極めて定型的なHerpes感染の多核扁平上皮細胞があり、簡単に同定できます。
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問題
6
症例問題
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良性細胞放射線変化 (回
答;1炎症性変化、2ヘルペス感染細胞、3化生細胞、4良性細胞放射線変化、5扁平上皮癌) OG好性あるいはTwo tone colorの細胞があり核も大きくサイズのバラツキはあります、癌にみられるような核Chromatinの粒状性はなく均一に淡く染色され、非腫瘍細胞の放射線の変化と判断できます。
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問題
7
症例問題
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高度異形成 (回
答;1上皮内癌、2未熟化生細胞、3軽度異形成、4高度異形成、5頸部腺癌)
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問題
8
症例問題
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上皮内癌 (回
答;1中等度異形成、2頸部腺癌、3上皮内癌、4扁平上皮癌、5予備細胞) いずれも深層型の核異型細胞があり、N/Cは4/5を超えるものが多く、核の緊満感のあるものがみられます。表層〜中層の細胞はみられず、CIN IIIで上皮内癌と判断することができると思います。
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問題
9
症例問題
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角化型扁平上皮癌 (回
答;1高度異形成、2角化型扁平上皮癌、3悪性黒色腫、4老人性膣炎、5癌肉腫) 光輝性のあるOG好性あるいはライトグリーン好性のDyskaryotic
cell があり、核のみならず、細胞形態そのものもおたまじゃくし様のものなど異常なものが明瞭にみられ浸潤性角化型扁平上皮癌と判断されます。
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問題
10
症例問題
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非角化型扁平上皮癌 (回
答;1上皮内癌、2頸部腺癌、3 小細胞癌、4高度異形成、5非角化型扁平上皮癌) N/Cが高く、表層の扁平上皮などに比べるとサイズの小さい異型細胞があります。ある程度相互接着があります。上段では核小体が大きく目立つ細胞集塊があり、二核のものもあります。核のChromatinの粒状性はそれほど目立たず、核の形態のみからは腺癌やGlassy Carcinomaが鑑別対象になりますが、核の偏在傾向はありません。 細胞質はGlassyにするには小さすぎます。下段の写真では、上段のものほど核小体がくっきりとはしない異型細胞があり、ライトグリーンでかなり強く染まる細胞質のあるものでChromatinが荒く見える細胞が含まれています。 また仔細にみると細胞質が淡い集団のなかに細胞質辺縁に厚みのある領域が全周性に見えるところがあり扁平上皮への分化があることが推定できます。
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