H17年度解答と解説

〔解説;滋賀医科大学検査医学講座教授 岡部英俊先生〕

細胞分類問題

 A 免疫芽球   B 中型リンパ球   C 形質細胞   D小リンパ球  E異型リンパ球

 Eの異型リンパ球を除くと正解率が高かった。異型リンパ球については、組織球という回答が多く見られたが、これは核の凸凹に着目した回答と思われるが、細かい核の凸凹が組織球より多く、また胞体も組織球に比べ小さい点に着目して回答すれば正解に達しえたと思われる。なお、リンパ芽球という回答もみられたが、リンパ芽球という名称は、リンパ腫の内で特殊なタイプのものに用いる名称で、それ以外のリンパ腫や反応性のリンパ節の細胞に一般的に使用する名称ではない。またリンパ芽細胞性のリンパ腫では腫瘍細胞の形態はMonotonousです。従って通常提示されたような標本の細胞はリンパ芽球とせず、異型リンパ球と考えられる。核の異型を把握して周囲の状況を勘案できれば異型リンパ球という結論が導けたと思われる。

 

症例 1  亜急性壊死性リンパ節炎  

 壊死性リンパ節炎では、Apototic cellの同定とCell DebrisPhagocytosisしたものが多数みられ幾分反応性に腫大したリンパ球が増えていることが把握できれば、診断できる。反応性という回答は腫瘍、非腫瘍の鑑別上は間違いではないが、所見を把握して、最終診断を推定できるレベルに到達することが望まれる。Melanomaという回答はPhagocytosisされたDebrisをメラニン色素と誤認したものと思われるが、Phagocytosisをした細胞内の顆粒にはMelanocyteのものと異なり、色の淡いものが含まれており、この点に留意すれば間違うことはないと思われる。

 

症例 2

 癌転移  

 粘液を含む癌細胞が明瞭に見られる。形態的に反応性という回答にはならないと思われ、横紋筋肉腫も考えにくい所見である。

 

症例 3

 小細胞癌転移  

 上皮性の結合が把握できれば癌と診断できるものと思われる。年齢を加味すれば正解に到達できる。

 

症例 4

 悪性リンパ腫中細胞型 

 細胞のサイズが十分把握できていない場合は、反応性となるものと思われる。Giemsa標本のほうがより所見がとりやすいので、そちらを見れば判断可能と思われる。

 

症例 5

 悪性リンパ腫大細胞型 

 分類の妥当性はともかく、リンパ腫と判断できていれば良いと思われる。

 

症例 6

 悪性リンパ腫大細胞型(混合型、中細胞型、いずれでもOK)  

 各施設で回答が有る程度ばらついていた。細胞のサイズを十分考慮して判断できなかった施設で非腫瘍性の判断がされたと思われる。また多型細胞型リンパ腫と細胞の由来の関係に対する配慮の足りない施設も少数あった。

 

症例 7

 結核

 多くの施設でかなり良くできていた。結核として所見上、特に問題はないものと思われる。

 

症例 8

 ホジキンリンパ腫

 正解率も高く、ホジキンリンパ腫として、所見上問題はない。